『館千』
pixivにあげてたやつを
こっちに上げるの忘れてました。
_____
館千にハマッた初期のプロットより。
今更ですがもう一度書いてみました。
千家伊織は館千ルートで安寧を生きて欲しい。
私が思う『館千』の在り方はこうです。
こんな感じで愛が育まれていくと思うのです。
友愛だけでなく性的な欲求を含んだものが。
千家が館林を人間として尊敬し、認め愛した時に
館林の’雄’の部分に触れた瞬間
’雌’として受け入れたくなるのではないかと
考えます。
でもそこは千家様ですから
ただ’雌’になるだけではないなぁと。
____________________
心身衰弱していた千家を私邸で匿い始めて数ヶ月。
軍服姿を見慣れていたので、千家の寝巻き姿はとても新鮮だった。
とはいえ、そんな感慨ばかり感じていられない。
生きる気力をなくした千家を支えなければと密かに燃えていた。
支えると言っても、衣食住を提供し、仕事の合間に話しに行くことしかできないのだが。
そう過ごしてきても、千家はなかなか心を開いてくれなかった。
廃人のようだった当初よりは随分と生気が戻り、読書をするまでになった。
最近は返事をしてくれるようになったが、それでも館林の話す言葉の半分の量もない。
千家憎しの軍人が多い中、館林だけは千家を見捨てられなかった。
千家を幼い頃から知っていたから、どんな非道に深入りしていても、どうしても見捨てられなかったのだ。
館林は、私室に一番近い客室に千家を置いた。
軍内での階級が上がった館林は、直属の部下以外の者が私邸に出入りすることも増えた。
その中には千家に憎悪を抱く者も少なからずいるようなのだ。
同じ組織に身を置く者を疑いたくはない。
だが、情に駆られた人間が、何をするかわからないことは事実だ。
念のために千家は自分の近くに置いておきたかった。
そしてある日。
地方に出向かれる天司様の警護として泊まりで供をする予定だったが、天司様の体調が思わしくなく延期になった。
天司様の私室へ招かれ、ベッドから直接お声をかけていただいた。
直前になっての予定変更とはいえ、直にお言葉を頂き更に忠誠を誓ったのだった。
そんなこんなで、館林は私邸へと帰宅した。
爺やに軽く事情を話し、私室へと向かう。
いつものように千家の部屋をノックした。
返事はないがいつものこと。
勝手に開けて室内を伺う。
千家はベッドに横になっている。
眠っているのかと近づき、すぐに異変に気づいた。
饐えた臭いが鼻につく。
否応なしに嗅ぎ慣れた血の臭いだ。
「千家!?」
掛けてあった布をどけると、そこは血まみれだった。
千家はぐったりとしていたが、意識はあるようで眼は半分開いていた。
どこからの出血かと全身を見る。
左腕だ。
上腕を中心に血が広がっている。
館林は、すぐに爺やを呼んで医療道具を持たせた。
千家の上半身を脱がし、血でへばりついた腕周辺は慎重に剥がした。
刃物で思い切り刺されたようで、傷は縦に深いように見える。
血の量からして大きな血管が切れている。
いつから血を流していたのかわからないが、貧血の状態であるのは間違いない。
「千家!しっかりしろ!」
命に別状は無さそうだが、このまま放っておくのも危険そうだった。
館林は応急処置の知識しかなく、どうしていいのかわからない。
焦る気持ちが募り、混乱していた。
「坊ちゃま、治療しますので場所をお変わりください!」
爺やはそんな館林を一喝し、千家の傍からどかせた。
手を熱湯で消毒し、傷周辺を清めていく。
傷口に触れるたび、千家が呻く。
皮膚を清めた後、火で炙った針で傷口を縫っていく。
医者でもない爺やの鮮やかな手つきに、館林はただ驚嘆するばかりだった。
「だから、誰にやられたと言っている」
「知らんと言っているだろう」
何度この押し問答をしたことだろう。
爺やの処置により、千家の傷は腐ることなく癒えてきた。
だが、犯人を頑として言わない。
いくら聞いても「知らん」の一言だった。
「犯人を庇っているんだろうか」
両手を組んで、額を乗せる。
館林は苦悩した表情で、馨に相談した。
ちなみにここは、応接室である。
「彼が庇うような人が軍にいます?」
「……いないな」
「僕もそう思いますよ」
「…ではなぜ、名前どころか特徴さえも言わないんだろうか」
「はっきり言って僕も千家伊織は大嫌いですし、いつでも殺したいと思っています」
「馨!」
「冗談ですよ。いや、冗談ではないけど、館林様が悲しむから実行しません」
「馨…」
「何を言いたいかって、僕みたいな奴は五万といるってことです」
「……」
馨の言うことは尤もだった。
仕方がないのだ。
地位も名声も、命さえも自由に操ってきたのだから。
『千家伊織』という軍人は。
しんとした部屋で、片隅に佇んでいた爺やが静かに口を開いた。
「…日々のお世話をさせて頂いておりますが」
「思いのほか、伊織様という方は、育ちの良い、お優しい方だと感じます」
二人は爺やの顔を見た。
「ご自分がされてきたことの非道さを重々ご理解なさっていて、
あえて…………いえ、出すぎたことを申しました」
頭を下げてから、爺やは食器の片付けをし始めた。
馨は複雑そうな表情で紅茶を啜り、館林はそのまま考え込んでしまった。
「千家、夕餉だぞ」
館林は、張り切って食事を千家の部屋へ運ぶ。
ベッドの端に腰を下ろして、サイドテェブルに置く。
ベッドヘッドに凭れて読書をしていた千家が呆れたように言う。
「わざわざ部屋で摂らんでも」
「病人は大人しくしていろ」
ほら、と口元にスプーンを差し出される。
思わず口を開けると、温かいスゥプが口の中に入った。
磯の良い香りが鼻を抜ける。
「…自分で食べられる」
「貴様は元々左利きだろう?無理をするな」
楽しそうに、再びスプーンを差し出す館林。
嫌そうにしながらも口を開ける千家。
そして放り込まれる温かい食事。
飲み込んでから口を開く。
「……両利きだと何度言ったら」
「気にするな。世話を焼かれておけ」
結局、全ての食事を館林に食べさせられる。
曰く「雛鳥に餌をやっているような快感がある」とのことだった。
怪我を負ってからというもの、毎日のことだ。
もう傷は完治間近。
千家は拒絶することを諦めていた。
食事はともかく、千家の嫌なことがある。
白い靄に包まれた風呂場。
「ほら」
館林が全裸に腰布を巻いた状態で、桧の腰掛に座って言う。
こっちへ来いと言わんばかりの顔で、摩擦用の布を構えている。
千家の身体を洗う用意は万端だと。
毎日のように、こうして風呂に入れられる。
「怪我を濡らしてはいけない」と強引に洗われるのだ。
意地になっても仕方がないと対面に座る。
見られて困るものもなしと諦めたまでは良かったのだが…
「……」
温かい湯、皮膚を擦る布の心地よい感触。
はじめは他人の手に緊張したものだったが、数日で慣れた。
だがそこで問題が起きた。
洗われながら身体が弛緩するようになると、しばらく使っていなかった部分が反応し始めたのだ。
館林の手つきは優しく、皮膚をなぞられるたびに肌が粟立つ。
際どい部分を洗われると、自然と息が乱れてくる。
勃起したものが腰布を押し上げる。
そんな千家を笑うでもなく、館林はその猛りを解放しようと手を伸ばす。
布越しに握られて擦られるたび、あらぬ声が漏れそうになる。
「…っめろ…」
力ない手で館林を押し返すが、ただ笑うだけで流される。
「仕方ないことだ、気にするな」
気にするなと言われて、はいそうですねと言えるはずがない。
「くっ…」
湯か体液かの水音が耳を犯すたびに、更に熱は集まっていく。
千家の様子を見ながら、館林は手を早める。
「…ふ…ッ…んん……」
少し痛いくらいに先端を押され、熱が溢れ出した。
脱力して額が館林の肩に当たる。
倒れないようにと、館林は千家の両肩を掴んだ。
「……」
自然と千家の視線は館林の股間に下がる。
まただ。そこは勃起していた。
千家を慰めるたび、館林も興奮しているようだった。
いくら猛っていても紳士的で、千家に何をさせるでもない。
千家も何もしてこなかった。
考えてみれば、館林はいつも仕事から直帰している。
女と遊んでいる様子は全くない。
悲しいかな、邸宅で男子の世話を焼く妙齢の色男。
-ここに触れたらどうなるのだろう。
ふと千家は思った。
自分ばかりが辱めを受けて不公平だと常々思っている。
いっそ自分が館林の猛りを慰めてやれば良いのではないか。
自分の気も晴れるし、館林も楽になる。
一石二鳥ではないか。
好奇心と意地の悪い心が湧き上がって来た。
そのまま、千家は右手を伸ばした。
「ッ千家?!」
館林は、予想通りの素っ頓狂な声を上げた。
千家は鼻で笑う。
布越しに触れたそれは熱く脈打っていた。
滲み出た体液でしっとりと粘ついている。
先端を指で撫でた後、竿全体を握り締めた。
「…く…せ、…んッ」
千家の両肩を掴んでいた手に力が入る。
頬に館林の熱い息がかかる。
自分の冷たい髪が皮膚にへばり付いているのを感じる。
皮膚が熱を帯びているのが分かる。
「貴殿も、久しいよう、だな」
先ほどの館林と同じように水音を立てながら、千家も手を早める。
どくどくと聞こえそうなほど激しい血流。
「ふ…ッ…!」
びくびくと身体を震わせながら、館林が達した。
千家の側頭に頬を押し当てているため、熱い吐息が耳を掠める。
熱を持った千家の肌が粟立った。
息を整えている館林が、千家の耳元で囁いた。
「……私を慰めながら、興奮したのか」
そうして再び千家の勃起を握り込む。
「……ただのっ、生理現象、だ」
「…千家」
熱い息がかかった部分がじんと痺れる。
館林が、千家の腰布の中に手を入れた。
「あ、」
粘膜に指が触れる。
数ミリの靄が晴れ、快感が脳を突き抜けた。
もっと欲しいと、雌のような衝動が沸き起こる。
両足が自然に開いていく。
「貴殿も」
苦しいだろう、と言葉にして、再び勃起を握る。
「くっ、煽る、な…」
苦しそうな館林の声にぞくぞくとする。
-もっと聞きたい。
「もっと……」
消え入りそうな声で呟き、館林の首筋に吸い付いた。
館林の匂いがする。
思わず滲んだ汗を舐めとる。
塩気と甘さが舌を痺れさせる。
「ん…」
恍惚として何度も舐める。
-もっと欲しい。
「…ッ千家…!」
突然、後頭と膝裏に手が触れたかと思うと、身体が傾いだ。
広い浴室の床に押し倒されていた。
「…館林……」
覆い被さった館林の唇に触れた。
するりと撫でて、見つめる。
傷に感じた痛みはすぐに消えていた。
それよりも、熱くて仕方がないのだ。
-どうにかして欲しい。
澄み渡った蒼穹のような瞳を、じっと見つめる。
燻っていた光が輝くのが見えた。
「……っすまん」
そう言った館林に首筋に思い切り噛み付かれて、顔を歪める。
と、すぐにじっとりと熱い舌で舐め上げられた。
同時に、下肢に擦り付けられる猛り。
「ふ…」
千家の腰が自然と揺れる。
館林は当然それに気づいている。
千家の開きかけた足を片方持ち上げた。
腰布はすでに意味を為しておらず、猛りきったものと秘穴が曝される。
館林は自分の指を舐めて、千家の秘穴をなぞった。
入口を少し解してから、つぷりと指を差し込んだ。
「っう…」
締まりきったそこを乱暴に暴いていく。
普段の穏やかさとは違う、館林の粗暴さ。
首筋に何度も噛み付かれながら、千家はさらに息を乱した。
「は、…ん」
二本目の指を挿入し、さらに広げていく館林。
異物感と屈辱感。
だが、それ以上の被征服感が快楽だった。
明らかに解れ切れていないそこ。
それでも、千家は早く欲しかった。
それは館林も同様のようで。
館林の鍛え上げられた腹部に腰を突き出す。
先端がぬるりと擦れた。
「…っ」
我慢できなくなった館林は、とうとう千家のそこに熱い自分を押し当てた。
「すまん…ッ」
先端をゆっくりと埋めて、一気に貫いた。
酷い痛みを感じた後は、ただただ熱かった。
「すまん…、すまん……っ」
「ふっ……ぐ…、」
何度も謝罪の言葉を呟きながら、容赦なく突き刺す。
千家の腰を両手で掴んで、注挿を繰り返した。
余りの痛みで、千家のものはすっかり力を失っていた。
館林の動きが激しくなり、どぷりと奥に熱を感じた。
ゆっくりと腰を抜き差しして、呆然と息を乱す。
そんな館林を感じて、薄れていく意識で千家は笑った。
-ざまをみろ。
翌日、千家はベッドにうつ伏せて本を読んでいた。
「本当に、すまなかった」
館林は土下座した。
「本当に、すまん」
ベッドの端に座って頭を下げたまま、何度も謝る。
千家は完全に無視を決め込んでいた。
”一方的に犯した”という風な振る舞いに腹が立った。
「痛かっただろう。見せてみろ」
この台詞も何度目だろうか。
いい加減に鬱陶しくなってきた。
「五月蝿い」
「千家っ」
やっと口を開いてくれた。こっちを見てくれた。
そんな喜色満面の表情で館林が土下座を解いた。
「五月蝿い」
「軟膏を塗るから」
「止めろ」
「遠慮するな、私の責任だ」
「触るな」
伸びてくる手を何度も振り払う。
腕の怪我に響いて顔を顰める。
そうするとまた館林が心配げに見つめてくる。
「本当に、……」
何もかも自分のせいだと言わんばかりだった。
確かに少しは館林の責任もあるが、半分以上は千家の自業自得だ。
館林に謝られる謂れはない。
千家が苦虫を潰したような顔をしていると、館林はおもいつめたように真顔で言った。
「……そうだ。千家。契りを結ぼう」
「…………はぁ?」
「貴様と私で義兄弟となるのだ。婚姻と言い変えてもいい。」
「……貴殿はとうとう頭がおかしくなったようだな」
「冗談ではない。私が責任を持って貴様と添い遂げる」
「おい、近寄るな」
ぐいぐいと押してくる館林。
千家は恐怖を感じて起き上がり、後ずさった。
「貴様も私を憎からず思ってくれているだろう?」
妙に自信の満ちた笑顔で、館林が言う。
千家は開いた口が塞がらないが、否定も肯定もしない。
ただ「ふん」と顔を背けた。
その言葉が事実かどうかは、肌を重ねた二人だけが知っている。
こっちに上げるの忘れてました。
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館千にハマッた初期のプロットより。
今更ですがもう一度書いてみました。
千家伊織は館千ルートで安寧を生きて欲しい。
私が思う『館千』の在り方はこうです。
こんな感じで愛が育まれていくと思うのです。
友愛だけでなく性的な欲求を含んだものが。
千家が館林を人間として尊敬し、認め愛した時に
館林の’雄’の部分に触れた瞬間
’雌’として受け入れたくなるのではないかと
考えます。
でもそこは千家様ですから
ただ’雌’になるだけではないなぁと。
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心身衰弱していた千家を私邸で匿い始めて数ヶ月。
軍服姿を見慣れていたので、千家の寝巻き姿はとても新鮮だった。
とはいえ、そんな感慨ばかり感じていられない。
生きる気力をなくした千家を支えなければと密かに燃えていた。
支えると言っても、衣食住を提供し、仕事の合間に話しに行くことしかできないのだが。
そう過ごしてきても、千家はなかなか心を開いてくれなかった。
廃人のようだった当初よりは随分と生気が戻り、読書をするまでになった。
最近は返事をしてくれるようになったが、それでも館林の話す言葉の半分の量もない。
千家憎しの軍人が多い中、館林だけは千家を見捨てられなかった。
千家を幼い頃から知っていたから、どんな非道に深入りしていても、どうしても見捨てられなかったのだ。
館林は、私室に一番近い客室に千家を置いた。
軍内での階級が上がった館林は、直属の部下以外の者が私邸に出入りすることも増えた。
その中には千家に憎悪を抱く者も少なからずいるようなのだ。
同じ組織に身を置く者を疑いたくはない。
だが、情に駆られた人間が、何をするかわからないことは事実だ。
念のために千家は自分の近くに置いておきたかった。
そしてある日。
地方に出向かれる天司様の警護として泊まりで供をする予定だったが、天司様の体調が思わしくなく延期になった。
天司様の私室へ招かれ、ベッドから直接お声をかけていただいた。
直前になっての予定変更とはいえ、直にお言葉を頂き更に忠誠を誓ったのだった。
そんなこんなで、館林は私邸へと帰宅した。
爺やに軽く事情を話し、私室へと向かう。
いつものように千家の部屋をノックした。
返事はないがいつものこと。
勝手に開けて室内を伺う。
千家はベッドに横になっている。
眠っているのかと近づき、すぐに異変に気づいた。
饐えた臭いが鼻につく。
否応なしに嗅ぎ慣れた血の臭いだ。
「千家!?」
掛けてあった布をどけると、そこは血まみれだった。
千家はぐったりとしていたが、意識はあるようで眼は半分開いていた。
どこからの出血かと全身を見る。
左腕だ。
上腕を中心に血が広がっている。
館林は、すぐに爺やを呼んで医療道具を持たせた。
千家の上半身を脱がし、血でへばりついた腕周辺は慎重に剥がした。
刃物で思い切り刺されたようで、傷は縦に深いように見える。
血の量からして大きな血管が切れている。
いつから血を流していたのかわからないが、貧血の状態であるのは間違いない。
「千家!しっかりしろ!」
命に別状は無さそうだが、このまま放っておくのも危険そうだった。
館林は応急処置の知識しかなく、どうしていいのかわからない。
焦る気持ちが募り、混乱していた。
「坊ちゃま、治療しますので場所をお変わりください!」
爺やはそんな館林を一喝し、千家の傍からどかせた。
手を熱湯で消毒し、傷周辺を清めていく。
傷口に触れるたび、千家が呻く。
皮膚を清めた後、火で炙った針で傷口を縫っていく。
医者でもない爺やの鮮やかな手つきに、館林はただ驚嘆するばかりだった。
「だから、誰にやられたと言っている」
「知らんと言っているだろう」
何度この押し問答をしたことだろう。
爺やの処置により、千家の傷は腐ることなく癒えてきた。
だが、犯人を頑として言わない。
いくら聞いても「知らん」の一言だった。
「犯人を庇っているんだろうか」
両手を組んで、額を乗せる。
館林は苦悩した表情で、馨に相談した。
ちなみにここは、応接室である。
「彼が庇うような人が軍にいます?」
「……いないな」
「僕もそう思いますよ」
「…ではなぜ、名前どころか特徴さえも言わないんだろうか」
「はっきり言って僕も千家伊織は大嫌いですし、いつでも殺したいと思っています」
「馨!」
「冗談ですよ。いや、冗談ではないけど、館林様が悲しむから実行しません」
「馨…」
「何を言いたいかって、僕みたいな奴は五万といるってことです」
「……」
馨の言うことは尤もだった。
仕方がないのだ。
地位も名声も、命さえも自由に操ってきたのだから。
『千家伊織』という軍人は。
しんとした部屋で、片隅に佇んでいた爺やが静かに口を開いた。
「…日々のお世話をさせて頂いておりますが」
「思いのほか、伊織様という方は、育ちの良い、お優しい方だと感じます」
二人は爺やの顔を見た。
「ご自分がされてきたことの非道さを重々ご理解なさっていて、
あえて…………いえ、出すぎたことを申しました」
頭を下げてから、爺やは食器の片付けをし始めた。
馨は複雑そうな表情で紅茶を啜り、館林はそのまま考え込んでしまった。
「千家、夕餉だぞ」
館林は、張り切って食事を千家の部屋へ運ぶ。
ベッドの端に腰を下ろして、サイドテェブルに置く。
ベッドヘッドに凭れて読書をしていた千家が呆れたように言う。
「わざわざ部屋で摂らんでも」
「病人は大人しくしていろ」
ほら、と口元にスプーンを差し出される。
思わず口を開けると、温かいスゥプが口の中に入った。
磯の良い香りが鼻を抜ける。
「…自分で食べられる」
「貴様は元々左利きだろう?無理をするな」
楽しそうに、再びスプーンを差し出す館林。
嫌そうにしながらも口を開ける千家。
そして放り込まれる温かい食事。
飲み込んでから口を開く。
「……両利きだと何度言ったら」
「気にするな。世話を焼かれておけ」
結局、全ての食事を館林に食べさせられる。
曰く「雛鳥に餌をやっているような快感がある」とのことだった。
怪我を負ってからというもの、毎日のことだ。
もう傷は完治間近。
千家は拒絶することを諦めていた。
食事はともかく、千家の嫌なことがある。
白い靄に包まれた風呂場。
「ほら」
館林が全裸に腰布を巻いた状態で、桧の腰掛に座って言う。
こっちへ来いと言わんばかりの顔で、摩擦用の布を構えている。
千家の身体を洗う用意は万端だと。
毎日のように、こうして風呂に入れられる。
「怪我を濡らしてはいけない」と強引に洗われるのだ。
意地になっても仕方がないと対面に座る。
見られて困るものもなしと諦めたまでは良かったのだが…
「……」
温かい湯、皮膚を擦る布の心地よい感触。
はじめは他人の手に緊張したものだったが、数日で慣れた。
だがそこで問題が起きた。
洗われながら身体が弛緩するようになると、しばらく使っていなかった部分が反応し始めたのだ。
館林の手つきは優しく、皮膚をなぞられるたびに肌が粟立つ。
際どい部分を洗われると、自然と息が乱れてくる。
勃起したものが腰布を押し上げる。
そんな千家を笑うでもなく、館林はその猛りを解放しようと手を伸ばす。
布越しに握られて擦られるたび、あらぬ声が漏れそうになる。
「…っめろ…」
力ない手で館林を押し返すが、ただ笑うだけで流される。
「仕方ないことだ、気にするな」
気にするなと言われて、はいそうですねと言えるはずがない。
「くっ…」
湯か体液かの水音が耳を犯すたびに、更に熱は集まっていく。
千家の様子を見ながら、館林は手を早める。
「…ふ…ッ…んん……」
少し痛いくらいに先端を押され、熱が溢れ出した。
脱力して額が館林の肩に当たる。
倒れないようにと、館林は千家の両肩を掴んだ。
「……」
自然と千家の視線は館林の股間に下がる。
まただ。そこは勃起していた。
千家を慰めるたび、館林も興奮しているようだった。
いくら猛っていても紳士的で、千家に何をさせるでもない。
千家も何もしてこなかった。
考えてみれば、館林はいつも仕事から直帰している。
女と遊んでいる様子は全くない。
悲しいかな、邸宅で男子の世話を焼く妙齢の色男。
-ここに触れたらどうなるのだろう。
ふと千家は思った。
自分ばかりが辱めを受けて不公平だと常々思っている。
いっそ自分が館林の猛りを慰めてやれば良いのではないか。
自分の気も晴れるし、館林も楽になる。
一石二鳥ではないか。
好奇心と意地の悪い心が湧き上がって来た。
そのまま、千家は右手を伸ばした。
「ッ千家?!」
館林は、予想通りの素っ頓狂な声を上げた。
千家は鼻で笑う。
布越しに触れたそれは熱く脈打っていた。
滲み出た体液でしっとりと粘ついている。
先端を指で撫でた後、竿全体を握り締めた。
「…く…せ、…んッ」
千家の両肩を掴んでいた手に力が入る。
頬に館林の熱い息がかかる。
自分の冷たい髪が皮膚にへばり付いているのを感じる。
皮膚が熱を帯びているのが分かる。
「貴殿も、久しいよう、だな」
先ほどの館林と同じように水音を立てながら、千家も手を早める。
どくどくと聞こえそうなほど激しい血流。
「ふ…ッ…!」
びくびくと身体を震わせながら、館林が達した。
千家の側頭に頬を押し当てているため、熱い吐息が耳を掠める。
熱を持った千家の肌が粟立った。
息を整えている館林が、千家の耳元で囁いた。
「……私を慰めながら、興奮したのか」
そうして再び千家の勃起を握り込む。
「……ただのっ、生理現象、だ」
「…千家」
熱い息がかかった部分がじんと痺れる。
館林が、千家の腰布の中に手を入れた。
「あ、」
粘膜に指が触れる。
数ミリの靄が晴れ、快感が脳を突き抜けた。
もっと欲しいと、雌のような衝動が沸き起こる。
両足が自然に開いていく。
「貴殿も」
苦しいだろう、と言葉にして、再び勃起を握る。
「くっ、煽る、な…」
苦しそうな館林の声にぞくぞくとする。
-もっと聞きたい。
「もっと……」
消え入りそうな声で呟き、館林の首筋に吸い付いた。
館林の匂いがする。
思わず滲んだ汗を舐めとる。
塩気と甘さが舌を痺れさせる。
「ん…」
恍惚として何度も舐める。
-もっと欲しい。
「…ッ千家…!」
突然、後頭と膝裏に手が触れたかと思うと、身体が傾いだ。
広い浴室の床に押し倒されていた。
「…館林……」
覆い被さった館林の唇に触れた。
するりと撫でて、見つめる。
傷に感じた痛みはすぐに消えていた。
それよりも、熱くて仕方がないのだ。
-どうにかして欲しい。
澄み渡った蒼穹のような瞳を、じっと見つめる。
燻っていた光が輝くのが見えた。
「……っすまん」
そう言った館林に首筋に思い切り噛み付かれて、顔を歪める。
と、すぐにじっとりと熱い舌で舐め上げられた。
同時に、下肢に擦り付けられる猛り。
「ふ…」
千家の腰が自然と揺れる。
館林は当然それに気づいている。
千家の開きかけた足を片方持ち上げた。
腰布はすでに意味を為しておらず、猛りきったものと秘穴が曝される。
館林は自分の指を舐めて、千家の秘穴をなぞった。
入口を少し解してから、つぷりと指を差し込んだ。
「っう…」
締まりきったそこを乱暴に暴いていく。
普段の穏やかさとは違う、館林の粗暴さ。
首筋に何度も噛み付かれながら、千家はさらに息を乱した。
「は、…ん」
二本目の指を挿入し、さらに広げていく館林。
異物感と屈辱感。
だが、それ以上の被征服感が快楽だった。
明らかに解れ切れていないそこ。
それでも、千家は早く欲しかった。
それは館林も同様のようで。
館林の鍛え上げられた腹部に腰を突き出す。
先端がぬるりと擦れた。
「…っ」
我慢できなくなった館林は、とうとう千家のそこに熱い自分を押し当てた。
「すまん…ッ」
先端をゆっくりと埋めて、一気に貫いた。
酷い痛みを感じた後は、ただただ熱かった。
「すまん…、すまん……っ」
「ふっ……ぐ…、」
何度も謝罪の言葉を呟きながら、容赦なく突き刺す。
千家の腰を両手で掴んで、注挿を繰り返した。
余りの痛みで、千家のものはすっかり力を失っていた。
館林の動きが激しくなり、どぷりと奥に熱を感じた。
ゆっくりと腰を抜き差しして、呆然と息を乱す。
そんな館林を感じて、薄れていく意識で千家は笑った。
-ざまをみろ。
翌日、千家はベッドにうつ伏せて本を読んでいた。
「本当に、すまなかった」
館林は土下座した。
「本当に、すまん」
ベッドの端に座って頭を下げたまま、何度も謝る。
千家は完全に無視を決め込んでいた。
”一方的に犯した”という風な振る舞いに腹が立った。
「痛かっただろう。見せてみろ」
この台詞も何度目だろうか。
いい加減に鬱陶しくなってきた。
「五月蝿い」
「千家っ」
やっと口を開いてくれた。こっちを見てくれた。
そんな喜色満面の表情で館林が土下座を解いた。
「五月蝿い」
「軟膏を塗るから」
「止めろ」
「遠慮するな、私の責任だ」
「触るな」
伸びてくる手を何度も振り払う。
腕の怪我に響いて顔を顰める。
そうするとまた館林が心配げに見つめてくる。
「本当に、……」
何もかも自分のせいだと言わんばかりだった。
確かに少しは館林の責任もあるが、半分以上は千家の自業自得だ。
館林に謝られる謂れはない。
千家が苦虫を潰したような顔をしていると、館林はおもいつめたように真顔で言った。
「……そうだ。千家。契りを結ぼう」
「…………はぁ?」
「貴様と私で義兄弟となるのだ。婚姻と言い変えてもいい。」
「……貴殿はとうとう頭がおかしくなったようだな」
「冗談ではない。私が責任を持って貴様と添い遂げる」
「おい、近寄るな」
ぐいぐいと押してくる館林。
千家は恐怖を感じて起き上がり、後ずさった。
「貴様も私を憎からず思ってくれているだろう?」
妙に自信の満ちた笑顔で、館林が言う。
千家は開いた口が塞がらないが、否定も肯定もしない。
ただ「ふん」と顔を背けた。
その言葉が事実かどうかは、肌を重ねた二人だけが知っている。
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