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ぶしんばで花見

ほのぼの兄弟可愛い。好き。
_______

眩暈がするほどに眩しい青空と、静かに咲き誇るどこまでも寛容な桜の花々。

「春だなぁ、兄弟」

山伏国広が目を細めて桜を見上げる。
猪口に入れた水を煽って、ふうと満足げにため息をついた。

「そうだな」

一方山姥切国広の猪口には日本酒。
くいっと煽って、こちらもため息。
山伏はああ見えて下戸で、逆に山姥切国広は中々飲める。




本日の出陣をすべて終えてもまだ夕刻前。
畑仕事でもしようかと思っていたところ、山伏国広が部屋を訪れた。
その手には山姥切国広の大好きな銘柄の日本酒。
それをじっと見つめていると一言、

「花見をしよう、兄弟」

ニカッと笑われて、思わずこくりと頷いていた。


縁側に並んで座る兄弟。
「なぁ兄弟。もっとこちらへ来ぬか?」

いつものくせで、人二人分くらいの距離を取って座っていたところ、山伏国広がちょいちょいと手招きした。山姥切国広は、ふるふると頭を振った。


近すぎるのは、あまり好きじゃない。
真の山姥切にあって写しにないものを、見つけ出されるかもしれない。
そんなものが本当にあるのかどうか彼自身にはわからないが、ないと言い切れない。
他者から見て初めて見える、見えてしまうものがあるかもしれない。

などと考え込んでいると、

「カカカ、そんなに拙僧の筋肉が見たいか?」

と、立ち上がった山伏国広にひょいと抱き上げられた。
山姥切国広の手から滑り落ちた猪口が、カツンと板間に落ちる。

片手で支えられ、肩にちょこんと座らされた。
まるで幼児のようだ。
だが気恥ずかしいというよりも、とても懐かしい感じがした。

「高みの見物、だな!」

嫌味でもなんでもなく、桜を指して豪快に笑う。

「…ほら、とても美しい」
今度はこちらを向いて、優しく目を細める。


…いつもこうだ。

この兄弟は、逃げ道を残してくれる。
桜のことを言っているのか、自分のことを言っているのか。
それは山伏国広本人にしかわからない。


-きっと桜のことを言っているんだ。
-だから、彼の言葉を、卑屈に受け止める必要も、否定する必要もないんだ。


山姥切国広は、そう納得できる。
そう納得しながら、なぜかとても面映い気持ちになる。


褒められれば褒められるほどに、嫌な気持ちになる自分。
それなのに、山伏国広の言葉は、綺麗な婉曲を描いて、わずかな隙間からストンと中に入ってくる。


目元に差した紅。
青緑色の髪。
鍛え上げられた筋肉。
能天気で豪快なのに、とても繊細で優しい兄弟。


「……ああ、美しいな。」

兄弟は桜を美しいという。
自分も桜を美しいという。


それで十分だ。



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