開君について思い悩む伊織君の話
13~4歳くらいの館林開くんと千家伊織くん。
館千ワンドロ11/1
____
『どこか痛いの?』
千家伊織を取り巻くドス黒い世界に、唯一現れた生温い男。
伊織は館林開が苦手だった。
「昨日ね、館林くんが私の帽子を拾ってくれたの」
帰宅しようと校門から出たとき、そんな黄色い話し声が聴こえてきた。
知った名前が出ているのでちらりと視線をやると、制服に身を包んだ女学生が3人で話しながら歩いている。学校の名は忘れたが見覚えのある制服だった。はしたない程に声の大きな女達だ。
そんな彼女らを横目に周囲を見渡すがいつもの迎えの馬車が来ていない。ここで待たざるを得ない。女学生たちの話を聞きたくはないが、わざわざ耳を塞ぐのもおかしかろう。自然と会話の続きを聞くことになってしまった。伊織はため息をついた。
「それでね、『素敵な帽子が少し汚れてしまいましたが…捨てるのも可哀想なので洗ってまた使ってあげてほしいな』なんて仰るのよ~」
「お帽子にまで情けをかけらるなんて…素敵なのはお優しい貴方様の方ですわ…!」
「本当にお優しいわよね。私もね………」
迎えの馬車を待っている間、伊織は館林の『武勇伝』を否応なしに聞かされた。
見知らぬ女学生だけでなく、その帽子や靴にまで気を配る紳士。
齢十数年のくせに大した男ぶりだ。そのくせ女学生に対する下心はまったくないのだから恐れ入る。だからこそ館林は女学生達の憧れの的であり、軟派であると学友に嫌われることもないのだろう。
そんなことを考えている間に女学生たちはどこかへ去っていった。
やれやれとため息をつき、腕を組みながら門壁にもたれて目を瞑った。
迎えはまだ来ない。
『どこか痛いの?』
あれはいつのことだっただろう。
くだらないパァティに参加したとき、具合の悪い伊織に心配そうに声をかけてきた館林。
放っておいてくれと思った。
大人の世界は普通そうだった。伊織の不調は即ち呪詛。仕方のないこと。休ませておけば治る。そういった具合だった。それが普通だった。だのに館林開という男はしつこく心配した挙句、その後も友達気取りで伊織の傍にまとわりついた。
ふとした時には近くに館林がいる。
学校で友達を作らない自分を心配してやはり傍に来る。自分は学友がたくさんいて輪の中心にいるくせに、わざわざ自分のところへ。一人で読書する伊織の傍へ来ては、やれ何を読んでいる、やれ内容はどうだ、と何かと話しかけて来る。うるさいので移動してもやはりついてくる。
館林開は犬のようだ。
だから無碍にできないのだ。
決して心を許しているわけではないし、館林に対して特別な感情を抱いているはずもない。
女学生の会話を聞いたろう。
あの男は誰にでもそうなのだ。あの男の優しさは万人に降り注いでいて、そう、まるで吉利支丹の唱える隣人愛そのものではないか。…館林にとって伊織が特別なわけではない。
「…」
こんな日に限って馬車はまだ来ない。
帰って読書をするのだ。読みかけの本がある。心安らかに、一人で、
「伊織君!」
驚いて目を開けると、嬉しそうな館林開がいた。噂をすればなんとやらというやつだろうか。
「珍しいね、君のところの馬車はまだなのかい?僕は今日歩いて帰る予定だったんだ。よかったら一緒に待っていてもいい?」
「…駄目だと言っても待つんだろう」
「ははは、その通りだよ」
館林はなんの屈託もなく快活に笑う。伊織の周囲にはない明け透けな物言いに思わず微笑んでしまった。
「あ、君今笑ったね。君は整った顔だから無表情でいるととても怖いと誰かも言っていたよ」
「…余計なお世話だ」
隙を見せたような距離を縮めてしまったかのようで恥ずかしくなり、伊織はすぐに冷静に戻った。いつの間にかこんなことが得意になっている。
地面に視線を落としてしまった伊織を見て、館林は残念そうにした。
が、すぐに伊織の前に立って右手でその細い顎をすくい、真顔で言った。
「笑った方が素敵なのに」
「な、」
伊織は絶句した。
女学生にかけるような言葉を掛けられて、怒りと恥辱を込めてギッと館林を睨む。
「……ぼ、僕を侮辱しているのか!」
「あ!伊織君が怒った!」
なぜか嬉しそうに館林が笑う。
伊織の怒りはますます高まる。
「貴様…!!」
「ようし、決闘だ!」
何やら揉める二人の周囲には野次馬ができかけていた。
その時、馬の嘶きと車輪の音。
「せ、千家様!遅れて申し訳もありませぬ!!」
馬車から下りた運転手が帽子を取って慌てて謝った。
水を差された二人は、出しそうな拳を宙に浮かせたまま。
「あーあ、いいところだったのにね」
「……」
館林に乗せられた。伊織は自らの未熟さを恥じた。
「…良い。帰るぞ」
「は、はいい!」
運転手に声をかけて馬車に乗り込む。
すると窓の枠に手をかけた館林が覗き込んで言った。
「喧嘩はまた明日な」
またね、と無邪気に笑って手を振っている。
「…出せ」
どかどかと中に入ってくる。
千家伊織にこんな接し方をしてくる人間はいなかった。
どうしていいのかわからない。
走り出す馬車。
揺られながら両手で顔を覆った。
心なしか熱い。
人前で恥をかいたから。
怒りで興奮したから。
どれも当たっているようで何か違う気がした。
胸が高鳴るのはなぜだ。
顔が熱いのはどうしてだ。
館林の笑顔が頭から離れないのはどういうことだ。
…伊織は頭を振って目を瞑った。
やはり館林開という男は苦手だ。
館千ワンドロ11/1
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『どこか痛いの?』
千家伊織を取り巻くドス黒い世界に、唯一現れた生温い男。
伊織は館林開が苦手だった。
「昨日ね、館林くんが私の帽子を拾ってくれたの」
帰宅しようと校門から出たとき、そんな黄色い話し声が聴こえてきた。
知った名前が出ているのでちらりと視線をやると、制服に身を包んだ女学生が3人で話しながら歩いている。学校の名は忘れたが見覚えのある制服だった。はしたない程に声の大きな女達だ。
そんな彼女らを横目に周囲を見渡すがいつもの迎えの馬車が来ていない。ここで待たざるを得ない。女学生たちの話を聞きたくはないが、わざわざ耳を塞ぐのもおかしかろう。自然と会話の続きを聞くことになってしまった。伊織はため息をついた。
「それでね、『素敵な帽子が少し汚れてしまいましたが…捨てるのも可哀想なので洗ってまた使ってあげてほしいな』なんて仰るのよ~」
「お帽子にまで情けをかけらるなんて…素敵なのはお優しい貴方様の方ですわ…!」
「本当にお優しいわよね。私もね………」
迎えの馬車を待っている間、伊織は館林の『武勇伝』を否応なしに聞かされた。
見知らぬ女学生だけでなく、その帽子や靴にまで気を配る紳士。
齢十数年のくせに大した男ぶりだ。そのくせ女学生に対する下心はまったくないのだから恐れ入る。だからこそ館林は女学生達の憧れの的であり、軟派であると学友に嫌われることもないのだろう。
そんなことを考えている間に女学生たちはどこかへ去っていった。
やれやれとため息をつき、腕を組みながら門壁にもたれて目を瞑った。
迎えはまだ来ない。
『どこか痛いの?』
あれはいつのことだっただろう。
くだらないパァティに参加したとき、具合の悪い伊織に心配そうに声をかけてきた館林。
放っておいてくれと思った。
大人の世界は普通そうだった。伊織の不調は即ち呪詛。仕方のないこと。休ませておけば治る。そういった具合だった。それが普通だった。だのに館林開という男はしつこく心配した挙句、その後も友達気取りで伊織の傍にまとわりついた。
ふとした時には近くに館林がいる。
学校で友達を作らない自分を心配してやはり傍に来る。自分は学友がたくさんいて輪の中心にいるくせに、わざわざ自分のところへ。一人で読書する伊織の傍へ来ては、やれ何を読んでいる、やれ内容はどうだ、と何かと話しかけて来る。うるさいので移動してもやはりついてくる。
館林開は犬のようだ。
だから無碍にできないのだ。
決して心を許しているわけではないし、館林に対して特別な感情を抱いているはずもない。
女学生の会話を聞いたろう。
あの男は誰にでもそうなのだ。あの男の優しさは万人に降り注いでいて、そう、まるで吉利支丹の唱える隣人愛そのものではないか。…館林にとって伊織が特別なわけではない。
「…」
こんな日に限って馬車はまだ来ない。
帰って読書をするのだ。読みかけの本がある。心安らかに、一人で、
「伊織君!」
驚いて目を開けると、嬉しそうな館林開がいた。噂をすればなんとやらというやつだろうか。
「珍しいね、君のところの馬車はまだなのかい?僕は今日歩いて帰る予定だったんだ。よかったら一緒に待っていてもいい?」
「…駄目だと言っても待つんだろう」
「ははは、その通りだよ」
館林はなんの屈託もなく快活に笑う。伊織の周囲にはない明け透けな物言いに思わず微笑んでしまった。
「あ、君今笑ったね。君は整った顔だから無表情でいるととても怖いと誰かも言っていたよ」
「…余計なお世話だ」
隙を見せたような距離を縮めてしまったかのようで恥ずかしくなり、伊織はすぐに冷静に戻った。いつの間にかこんなことが得意になっている。
地面に視線を落としてしまった伊織を見て、館林は残念そうにした。
が、すぐに伊織の前に立って右手でその細い顎をすくい、真顔で言った。
「笑った方が素敵なのに」
「な、」
伊織は絶句した。
女学生にかけるような言葉を掛けられて、怒りと恥辱を込めてギッと館林を睨む。
「……ぼ、僕を侮辱しているのか!」
「あ!伊織君が怒った!」
なぜか嬉しそうに館林が笑う。
伊織の怒りはますます高まる。
「貴様…!!」
「ようし、決闘だ!」
何やら揉める二人の周囲には野次馬ができかけていた。
その時、馬の嘶きと車輪の音。
「せ、千家様!遅れて申し訳もありませぬ!!」
馬車から下りた運転手が帽子を取って慌てて謝った。
水を差された二人は、出しそうな拳を宙に浮かせたまま。
「あーあ、いいところだったのにね」
「……」
館林に乗せられた。伊織は自らの未熟さを恥じた。
「…良い。帰るぞ」
「は、はいい!」
運転手に声をかけて馬車に乗り込む。
すると窓の枠に手をかけた館林が覗き込んで言った。
「喧嘩はまた明日な」
またね、と無邪気に笑って手を振っている。
「…出せ」
どかどかと中に入ってくる。
千家伊織にこんな接し方をしてくる人間はいなかった。
どうしていいのかわからない。
走り出す馬車。
揺られながら両手で顔を覆った。
心なしか熱い。
人前で恥をかいたから。
怒りで興奮したから。
どれも当たっているようで何か違う気がした。
胸が高鳴るのはなぜだ。
顔が熱いのはどうしてだ。
館林の笑顔が頭から離れないのはどういうことだ。
…伊織は頭を振って目を瞑った。
やはり館林開という男は苦手だ。
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ショタ館千でCDデビューしよう
- クリ山
- 2014/11/02(Sun)15:28:03
- 編集
ショタ館林が内面イケメンで完璧すぎる…!
女子の黄色い会話にいらいらいおりんかわいいね…(๑′ᴗ‵๑)
隣で周りの目も気にせずうるさく喋ってることもだけど、本当は自分の知らないとこで自分以外の他人に優しくしてる開様が気に食わなくて無意識にイライラしてたんだよね♡うんうん♡
顎クイッ開様!は、はずかしい!なんて恥ずかしい!!
伊織でなくてもこれは赤面するぞ!王子様かよ!!照れる!!
かと思えば決闘wwwこ、こどもか!!子供だった!可愛い…(:3っ )へ
お疲れっぽいのにワンドロ書いてくれてありがとうだよ〜!キュンキュンニヤニヤした!
女子の黄色い会話にいらいらいおりんかわいいね…(๑′ᴗ‵๑)
隣で周りの目も気にせずうるさく喋ってることもだけど、本当は自分の知らないとこで自分以外の他人に優しくしてる開様が気に食わなくて無意識にイライラしてたんだよね♡うんうん♡
顎クイッ開様!は、はずかしい!なんて恥ずかしい!!
伊織でなくてもこれは赤面するぞ!王子様かよ!!照れる!!
かと思えば決闘wwwこ、こどもか!!子供だった!可愛い…(:3っ )へ
お疲れっぽいのにワンドロ書いてくれてありがとうだよ〜!キュンキュンニヤニヤした!
デビュー曲「君の呪詛DAYS☆彡」
- ぐる子
- 2014/11/03(Mon)18:11:51
- 編集
デビュー曲いいね!!
思わず歌詞を考えてしまった(笑)
今回はプロットだけ先に考えてから本番に臨んだんだけど、書いてくうちにどんどんショタ館林が…王子に…(笑)いおりんって絶対開君のこと好きだったよね(*´ω`*)そんな自分にイラついて、みんなに優しい開君にもイラついて…みたいな…!
開君は無意識にキザな動作をして相手を落とすテクニックを持っていると思う(笑)いおりん大変だわ…www
いえいえ私が書きたかったから~!
館千いいよね♡
こちらこそ素敵な絵楽しませていただきました♡
SS感想までありがとう~(´∀`*)
思わず歌詞を考えてしまった(笑)
今回はプロットだけ先に考えてから本番に臨んだんだけど、書いてくうちにどんどんショタ館林が…王子に…(笑)いおりんって絶対開君のこと好きだったよね(*´ω`*)そんな自分にイラついて、みんなに優しい開君にもイラついて…みたいな…!
開君は無意識にキザな動作をして相手を落とすテクニックを持っていると思う(笑)いおりん大変だわ…www
いえいえ私が書きたかったから~!
館千いいよね♡
こちらこそ素敵な絵楽しませていただきました♡
SS感想までありがとう~(´∀`*)
