ショタ千家付き人x呪詛後のショタ千家
ショタ千家も付き人も、何もかもがフィクションすぎて何がフィクションなのかわかりません!!!
付き人:田邉正徳(たなべまさのり)
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「怖れる事なかれ。いざや――」
ゆえに伊織少年の言いたいことがよくわかる。
田邊は地上に部屋を与えられてはいるが、いわゆる監視室という役割を得た地下の個室に寝泊りしている。苦しむ少年を地下に一人残しておけなかった。
「伊織様」
「ぐぅ、あああ…ぎ、」
「おいたわしい…」
―せめて自分にもう少し力があれば。
ただただ悔やむばかりで、今日も夜が更けてゆく…――。
田邊の憂い通り、少年の苦悶は徐々に長く、強くなっていった。軍属の成人男子である田邉が押さえ込んでも足りぬ時があるほどに。
「あああああ!うぐ、あ、」
自分が主を守らなければ。
用事以外は少年の様子を見にきやしない他の人間どもに、小さな少年を任せてたまるものか。―いつの間にかそんな気概さえ生まれていた。
「伊織…様…?」
田邊は滑稽なほどにびくりと震えた。そんな様子を知ってか知らずか、伊織は何度も傷口を舐めた。表面の血を綺麗に舐め取った後、今度は傷口を吸い始めた。もっと、もっと血がほしい、というように。
ちゅ、ちゅぷ、と濡れた音が耳を犯す。伊織少年の匂いを、気配を、全身でひしひしと感じる。
伊織に圧し掛かり、その小さな唇を吸う。それだけでは足らず、熱い舌を絡めとって食む。
「せいつう…?わからない…熱いよ、たなべぇ…っ」
田邊の知る限り、伊織の精通は済んでいないはずだった。目の前の伊織は、娼婦のようにゆらゆらと腰を揺らして、田邊の精悍な肉体に擦りつけている。どのようにすれば快楽が得られるか、本能で理解しているのだろう。だが明確にどうしていいのかはわかっていない。そのもどかしい動きが、青年の欲情を余計に煽る。
「承知、しました…この田邊が、伊織様のお体を、大人の男性へと、導いて差し上げ、ます」
「あ、ああっ、あつ、熱い」
「伊織、さま…っ」
幼い身体は頂きを迎えた。ちょろちょろと溢れる尿の中に、白い粘性のものが混じっている。
どれほど呆けてていただろうか。
思考がクリアになっていき、理性が戻ってくる。そして思い至った。
欲望を解き放って我に返るも後の祭り。手には淫らな液体がこびり付いている。田邊は己の蛮行に戦慄した。正気に戻った伊織様は恐怖し、悲しんでいるに違いない。
―人肌か?それとも……体液か?
そっと額を撫でた。
「田邊…苦しい」
それが交わりの合図だった。
あの初めての夜から、伊織は血を啜って苦しみを緩和することを覚えた。神職家の者の血を少量頂いて舐めさせてみたりもしたが、やはり効果はなく、田邊の血だからこそ有効だということだけはわかった。おそらく田邉の微力な異能は、陽の気を秘めていたということなのだろう。陰である伊織と交わることで、死霊の声や呪詛を抑えられるのだ、と田邊は考えている。
「はい、伊織様」
―田邊はそう自分を納得させた。
「ああ、田邊…たなべぇ…」
初夜からひと月ほど経った頃。
「行ってまいります、伊織様」
回復した、というべきなのか。
「そうだ、以前読みたいとおっしゃっていた本をお持ちしたんですよ」
「お渡しするのをすっかり忘れていました。これを読んでお待ちください」
若干の後ろ髪を引かれつつ、田邊は地下を後にした。
闇討ち。
田邊とて軍属の軍人だ。剣術の腕に覚えもある。念のため帯刀の許可を得ていたことが功をなした。抜刀し、切りかかってきた男の剣を受けた。単純な思想犯かと思った。共産主義に傾倒する血気盛んな若者の蛮行だと。
―死とはこんなものなのか。
田邊は感慨も何もなく、冷めた気持ちで食われる自分を感じた。
「…田邊は?」
「田邊は國家反逆罪にて、処刑されました」
「……こっ__」
愕然とした。
唯一伊織の苦しみを共に背負おうとしてくれた田邊が、殺された。
國家反逆罪で?
伊織の思考能力を超えた情報、感情の乱れ。
ー陛下の呪詛体である伊織を操作できれば、國家をも手に入れられる。
考えの浅い連中は、田邊の行動を監視した末、そう思い至ったのだった。さらに、千家伊織の未完成な危うい色気は、男たちの心を刺激した。
千家伊織少年は、男たちの欲望と呪詛に翻弄され続け、地下での記憶はもちろん、この後数年の記憶が欠落するのであった。
「…童話?」
「伊織、この童話が何か…?」
「…知らん」
「……わからない」
「まぁよいではないですか。せっかくですし、國家に弥栄を運んでくれるよう元の場所に置いておきましょうよ。ね?」
―伊織様
「伊織?もしかして具合が悪いんですか?」
貴様が誰かは知らぬが、今の私には京一郎がいる。共犯者として、罪も天命も共に背負うと言った青年が。
だから、安心しろ。
「…?」
付き人:田邉正徳(たなべまさのり)
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「怖れる事なかれ。いざや――」
千家伊織少年が呪詛体の儀式を受けてから七日ほど。
いまだ呪詛との付き合い方のわからぬ少年は、特別な結界を張った地下の座敷牢に入れられていた。座敷牢といっても暗く汚らしいものではない。
小綺麗に整えられた内装に数多の本。
小綺麗に整えられた内装に数多の本。
洋式の美しい家具。
窓がないこと、部屋の入口が扉ではなく鉄格子であることさえ除けば、貴族の部屋そのものだった。
「伊織様」
室内に入ってきた付き人の青年ー田邊正徳が、少年の名を呼ぶ。
起きあがったままベッドに座っていた少年は、のろのろと顔を上げて焦点の定まらぬ目を向けた。
「千家伊織様」
ひとこと一言ゆっくりと噛み締めるように名を唱える侍従。
徐々に定まっていく少年の視点。
「・・・田邊?」
無垢で弱弱しい、だが絶対的に美しい瞳。
田邊はいつものように主に優しく語りかけた。
「中食をお持ちしました」
蒼白くやつれた顔で「そう…」と力なく頷く。
かつて知っていた少年の、天真爛漫さはすっかり影を潜めている。
「…田邊。まだ外に出てはいけないのか?」
俯きがちにそう聞いてくる。
そういえば、彼は外で走り回るのが大好きだった。
蝶を捕まえ、犬と戯れて。
「まだですよ。伊織様のお体がすっかり元気になられてからです」
「でも僕、もう起き上がれる」
泣きそうな顔で少年が強がる。
「御覧なさい。まだ重湯を食べられるようになっただけです。もっとたくさんお食事ができるようになったら、田邊と共に外へ参りましょう」
少年の手を両手で包み込んで宥めるが、それが何の慰みにもならないことは知っていた。
「ここは、何か…怖いものがたくさんいる…」
田邊は、震える少年の背中を撫でながら、もう片方の手で匙を取る。
「さぁ伊織様。冷めないうちに食べてしまいましょう」
力は強くないが、田邊は異能者だった。
ゆえに伊織少年の言いたいことがよくわかる。
呪詛で弱った体に惹かれてくるのだろうか、少年を狙っているかのように、座敷牢の周りには死霊が群がっている。結界によって入って来れないとはいえ、声が聞こえるのだ。積み重なった渇望と怨嗟の声が。
力の弱い田邊でさえ聞こえる声だ、呪詛で体の弱った異能の強い少年にはよほど怖いだろう。
田邊は少年と同じ目線に下がりながら、重湯を食べさせた。
―お可哀想に…。
たった十かそこらで、このような大役を得て。
誉れではあっても、決して幸福ではない。
現に彼は軟禁され、そこで恐怖に震えている。
現に彼は軟禁され、そこで恐怖に震えている。
郷里に弟や妹がたくさんいる田邉にとっては、苦しむ伊織少年が気の毒でならないのだった。
「ぅぐ…やめ…っ…!」
今夜も地下室には少年の呻き声が響き渡る。
田邊は地上に部屋を与えられてはいるが、いわゆる監視室という役割を得た地下の個室に寝泊りしている。苦しむ少年を地下に一人残しておけなかった。
すっかり慣れた鉄格子の鍵を開け、少年に走り寄る。
「伊織様」
死霊の恐怖と呪詛の痛みで混乱し、悶える少年の体をさする。
「ぐぅ、あああ…ぎ、」
労りを込めて何度も何度もさする。
半刻ほどして、少年は糸の切れた操り人形のように、ぱたりと気を失った。少年を定位置へ横たえて布団を掛けてやり、音を立てないように退室した。
監視室に戻り、執務机に向かう。記録帳を開いて今日の出来事を記入しながら、頁に刻まれたある数字の羅列を睨みつける。
―やはり、長くなってきている。
伊織少年は呪詛体の儀式を受けてからというもの、毎日苦しんでいる。それは死霊との睨み合いであり、呪詛の取り込みでもあった。
その時間が、日々延びてきている。
死霊との睨み合いが長ければ長いほど、少年の体力は消耗していき、やがて負けるだろう。死霊に負けるとはすなわち、取り込まれるということ。死霊に取り込まれた少年は暴走し、結果、神職や五本刀衆に排除されることは想像に難くない。
陰陽拮抗する力をもって、まったき力を得ると専門家に聞いたことがある。現在の伊織少年は陰の力を備えているため、場合によっては死霊に飲み込まれる恐れがあり、現にそうした末路を辿ったという呪詛体がいたという。
田邊はため息をついた。
自分に何かしてやれることはないのだろうか。
―國のため。
―禁上陛下のため。
そんな志を携えて上京し早猶余年。
帝国大学にて学んだ後は希望通り軍に入隊し、軍事演習の際に偶然縁のあった当主に気に入られ、神職十四家の千家家に仕えるようになった。
さまざまな仕事の中の一つとして、嫡男の家庭教師があった。勉学だけでなく、田邊の鍛えられた肉体を活かして、武道や遊びの相手もした。伊織少年は知識に貪欲で、強い好奇心を持ち、かつ天真爛漫な、美しい少年だった。気づけば自分は少年付きの従者になっており、自分もまたそれを喜んで受け入れていた。
賢くて優しくて、強い少年。
次期当主に相応しい、陽の気に溢れた少年だったのだ、儀式を受けるまでは。
「おいたわしい…」
爛々と輝いていたあの美しい瞳が、死んだように濁ってしまった。元の輝きを取り戻せるよう、少しでも助力したい。したいとは思うが、田邊に何ができようか。多少の死霊を見ることができる程度の自分には、伊織少年の苦しみも宿命も、共に背負うことはできぬ。
―せめて自分にもう少し力があれば。
ただただ悔やむばかりで、今日も夜が更けてゆく…――。
田邊の憂い通り、少年の苦悶は徐々に長く、強くなっていった。軍属の成人男子である田邉が押さえ込んでも足りぬ時があるほどに。
そうして更に七日ほどが過ぎた頃。
「あああああ!うぐ、あ、」
「伊織様!」
少年は狂ったように苦しみ、暴れた。そんな主を、田邉はいつものように必死に抱きしめた。
自分が主を守らなければ。
用事以外は少年の様子を見にきやしない他の人間どもに、小さな少年を任せてたまるものか。―いつの間にかそんな気概さえ生まれていた。
「…」
少年は日に日に無口になっていった。目はどんよりと沼のように濁り、放心状態が続いた。時間を問わず苦しみ、暴れだすようになった。
「ぐがああ!!ああああ!!!」
「伊織様!お気を確かに!!」
暴れる手足で殴られ、振り乱す髪に叩かれる。
田邊は毎日青あざだらけだった。今日も例に漏れない。
「いっ…!」
少年の爪が勢いよく頬を掠り、少し深く切れた。タラリと頬を流れる血の気配を感じる。
ふと少年が大人しくなった。不思議に思い、押さえ込んでいた少年を見やると、じっと自分の顔を…いや、頬を見ていた。その瞳は今まで伊織少年に見出したことのないものだった。天真爛漫なそれではなく、濁った沼のそれでもなく。まるで、
「伊織…様…?」
ベッドの軋む音がやけに耳に付く。縺れ合ってベッドの上に座り込んでいたのだが、少年が自分を見つめながら腹の上ににじり寄って来るのだ。
田邊は怯んでいた。無駄とわかっていたが、身体を引いた。二人は隙間がない程にぴったりと密着している。伊織少年の高鳴る鼓動が皮膚越しに伝わってくる。そして自分の鼓動も、恐怖と興奮とで暴走していた。小さくて冷たい手が、戸惑う田邊の頬に触れた。そして頬の傷口に顔を寄せたかと思うと、ぺろりと血を舐めた。まるで、妖艶な娼婦のように。
田邊は怯んでいた。無駄とわかっていたが、身体を引いた。二人は隙間がない程にぴったりと密着している。伊織少年の高鳴る鼓動が皮膚越しに伝わってくる。そして自分の鼓動も、恐怖と興奮とで暴走していた。小さくて冷たい手が、戸惑う田邊の頬に触れた。そして頬の傷口に顔を寄せたかと思うと、ぺろりと血を舐めた。まるで、妖艶な娼婦のように。
田邊は滑稽なほどにびくりと震えた。そんな様子を知ってか知らずか、伊織は何度も傷口を舐めた。表面の血を綺麗に舐め取った後、今度は傷口を吸い始めた。もっと、もっと血がほしい、というように。
「い、伊織、さま」
ちゅ、ちゅぷ、と濡れた音が耳を犯す。伊織少年の匂いを、気配を、全身でひしひしと感じる。
自分に少年趣味も男色趣味もないはずなのに、妖しげに高揚するこの気持ちはなんだ。
「たなべ…」
舌足らずに名前を囁かれたとき、とうとう理性が砕け散った。
伊織に圧し掛かり、その小さな唇を吸う。それだけでは足らず、熱い舌を絡めとって食む。
「んん」
主は苦しげでいて艶のある声を上げた。
これがあの千家伊織なのか。
この妖艶な生き物が、あの天真爛漫だったーー。
「伊織様…伊織様…」
体中に愛撫を施し、伊織もそれを享受している。
「あ、はぁ…たなべ…っ」
おそらく初めてであろう他人との触れ合いを、伊織は恐れもしていない。たった十かそこらの子供が。
もしや、ここにいるのは何か別の生き物なのかもしれない。田邊の知っている千家伊織とは別な生き物。
少年をすっかり裸にしてしまい、自らも半分脱げた状態になっていた。少年の股間のそれは、小さいながらも天を向いて震えている。先端からは透明な液体が間欠的に溢れている。我慢できなくなってそっと手で触れてみる。びくんと震える少年。
「伊織様…、精通は、お済みですか?」
首の辺りを吸いながら、少年に聞く。
「せいつう…?わからない…熱いよ、たなべぇ…っ」
胸元に下りた田邊をぎゅっと抱きしめ、快楽に悶える伊織。
田邊の知る限り、伊織の精通は済んでいないはずだった。目の前の伊織は、娼婦のようにゆらゆらと腰を揺らして、田邊の精悍な肉体に擦りつけている。どのようにすれば快楽が得られるか、本能で理解しているのだろう。だが明確にどうしていいのかはわかっていない。そのもどかしい動きが、青年の欲情を余計に煽る。
「承知、しました…この田邊が、伊織様のお体を、大人の男性へと、導いて差し上げ、ます」
そろそろ田邊も限界だった。
が、さすがに幼い伊織の後孔に、欲望を突き立てる気にはなれない。いきり立つ自分の屹立を、伊織の小さなそれと共に右手で包む。
「あ、ああっ、あつ、熱い」
腰を揺らしながら、伊織が啼く。ぬちゃぬちゃと音を立て、大小の屹立を擦り合わせる。
「伊織、さま…っ」
絶頂が近づき、手の動きが早くなっていく。伊織は感じたことのない快楽に、全身で揺らいでいた。田邊ももう余裕はなかった。
「だめ、だめ、あ、ああ、あ―――!」
幼い身体は頂きを迎えた。ちょろちょろと溢れる尿の中に、白い粘性のものが混じっている。
やはり精通は済んでいなかったようだ。田邊はそれを手で受けながら、さらに自分のものを擦る。
「うっ…―――!」」
伊織の幼い精を擦りつけながら、田邊も白濁を吐き出した。誰もいない地下空間に、二人の荒い息遣いが染み渡る。
どれほど呆けてていただろうか。
思考がクリアになっていき、理性が戻ってくる。そして思い至った。
―自分はなんという浅ましく、罪深い真似を。
「……い、伊織様…!」
欲望を解き放って我に返るも後の祭り。手には淫らな液体がこびり付いている。田邊は己の蛮行に戦慄した。正気に戻った伊織様は恐怖し、悲しんでいるに違いない。
が、見下ろした先の主は、恐怖も悲哀もなく、すでに安らかな寝息を立て始めていた。田邊はまじまじとその顔を見つめた。儀式以来初めて見た、あどけない安らかな寝顔だった。田邊の逞しい胸に頬を摺り寄せて、穏やかに眠っている。天真爛漫だったころの千家伊織少年のように。
―体の力が抜けた。
成人として武士として、いたいけな子供相手に、己の欲望に負けた自分は犬畜生にも劣るかもしれないが、果たして先ほどの行為は、主に悪い効果をもたらしたわけではないようだった。
―人肌か?それとも……体液か?
始め、主は一所懸命血を啜っていた。それとも、その後何度も求めてきた抱擁が重要だったのか。……不明な点ばかりではあったが、ともかく今は、主の眠りを邪魔しないように寄り添うことにした。
「良い夢を、伊織様…」
そっと額を撫でた。
せめてひと時だけでも安寧を。
「田邊…苦しい」
それが交わりの合図だった。
あの初めての夜から、伊織は血を啜って苦しみを緩和することを覚えた。神職家の者の血を少量頂いて舐めさせてみたりもしたが、やはり効果はなく、田邊の血だからこそ有効だということだけはわかった。おそらく田邉の微力な異能は、陽の気を秘めていたということなのだろう。陰である伊織と交わることで、死霊の声や呪詛を抑えられるのだ、と田邊は考えている。
「はい、伊織様」
伊織と戯れ合うことに嫌悪感は全くなかった。伊織の面倒を見、必要なものだけ買いに外出する以外は誰とも会わぬ生活。さらに、伊織少年の危うい色気。年若い田邊の劣情を誘うには十分すぎるほどだった。
主に求められるまま血を差し出した。いつしかそれは儀式にも似た行為となり、田邊の罪悪感は全く消えていた。呪詛体の伊織を慰めることは、結局天司様の呪詛を流す助けとなり、國家への奉仕へと繋がる。もとより志していた、まさしくそれだ。
―田邊はそう自分を納得させた。
「ああ、田邊…たなべぇ…」
狂ったように田邊の血を、白濁を舐める主。
「伊織様…っ」
そして自分も、狂っているのだろう。伊織の皮膚に、口に、欲望を吐き出して、血を舐めさせて、こんなにも興奮しているなんて。
初夜からひと月ほど経った頃。
田邊と千家伊織の濃密な地下生活は、唐突に終わりを告げた。
「行ってまいります、伊織様」
「ああ。…早く戻ってくれ」
いつものように買い物に出かけようとすると、伊織が少し不安そうに見上げてきた。死んだような表情ではなく、少し大人びたけれども、子供のように甘えた表情も見せてくれるようになった。
回復した、というべきなのか。
自分と血を交わし続けているからか、ここ最近は随分と調子が良さそうだった。次期当主として振舞おうという気概も戻っている。
「そうだ、以前読みたいとおっしゃっていた本をお持ちしたんですよ」
それは西洋で作られた子供向けのある童話だった。
「お渡しするのをすっかり忘れていました。これを読んでお待ちください」
伊織は嬉しそうにその本を受け取り、素直に従った。
若干の後ろ髪を引かれつつ、田邊は地下を後にした。
「田邊正徳!覚悟!!」
千家の領地を出たすぐの桜並木で、田邊は襲われた。
闇討ち。
田邊とて軍属の軍人だ。剣術の腕に覚えもある。念のため帯刀の許可を得ていたことが功をなした。抜刀し、切りかかってきた男の剣を受けた。単純な思想犯かと思った。共産主義に傾倒する血気盛んな若者の蛮行だと。
―違う。
太刀筋が違う。素人ではない。しかもなにか、禍禍しいものが、何か。
考えは正しく、相手が何か呟いたかと思うと、死霊が現れた。
考えは正しく、相手が何か呟いたかと思うと、死霊が現れた。
ーまさか、神職十四家の術者――
思った時には遅かった。見えるだけで、ただの人間である田邊は、あっさりと食われた。
「ぐふっ…ぎ」
―死とはこんなものなのか。
田邊は感慨も何もなく、冷めた気持ちで食われる自分を感じた。
―ああ、伊織様。
―麗しい貴方を、もう自分のものにできないことだけが、残念____
「…田邊は?」
従順で優しい侍従を待っていた伊織の元に現れたのは、見知らぬ男たちだった。
「田邊は國家反逆罪にて、処刑されました」
「……こっ__」
愕然とした。
唯一伊織の苦しみを共に背負おうとしてくれた田邊が、殺された。
國家反逆罪で?
あの生真面目で、愛國家の田邊が?
伊織の思考能力を超えた情報、感情の乱れ。
この混乱を、幼い伊織は瞬時に処理できなかった。
「さぁ、伊織様、我々と___」
伸びてくる手、手、手。服を剥かれて、素肌を嬲られ、蹂躙されていく、伊織。
ー陛下の呪詛体である伊織を操作できれば、國家をも手に入れられる。
考えの浅い連中は、田邊の行動を監視した末、そう思い至ったのだった。さらに、千家伊織の未完成な危うい色気は、男たちの心を刺激した。
千家伊織少年は、男たちの欲望と呪詛に翻弄され続け、地下での記憶はもちろん、この後数年の記憶が欠落するのであった。
「どうしたんです、伊織?」
ある一点を見つめたままの千家を不審に思い、京一郎は首を傾げた。
視線の先をたどると、本棚に無造作に置かれた童話があった。
「…童話?」
手に取ってパラパラと捲ってみると、明らかに幼年向けの内容だった。青い鳥がどうのという記述がある。京一郎はこの童話を読んだことがなかった。
「伊織、この童話が何か…?」
しばし逡巡した後、千家自身が首を傾げた。
「…知らん」
なぜか自室にある、記憶にない童話本。処分しようと思ったことが何度があったが、何となくそのままにしておいた。
「……わからない」
幸せの青い鳥の話。こんなくだらぬ物語を自ら求めるはずもないというのに。
「廃棄する」
千家の蔵書としては無用の物だ。今度こそ処分しよう、そう思った。
「まぁよいではないですか。せっかくですし、國家に弥栄を運んでくれるよう元の場所に置いておきましょうよ。ね?」
京一郎が和やかに言った。
―伊織様
ふいに誰かの声が脳裏を過ったような気がする。
誰だったか。
「伊織?もしかして具合が悪いんですか?」
再度押し黙ってしまった千家を見て、京一郎は心配そうに言った。千家は面はゆい気持ちになった。
―伊織様。
貴様が誰かは知らぬが、今の私には京一郎がいる。共犯者として、罪も天命も共に背負うと言った青年が。
だから、安心しろ。
「…?」
なぜ“安心しろ”などという言葉が浮かんだのかはわからないが、千家は見て見ぬふりをした。
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