見合い話の館千4
館林と千家。
館林様がナチュラルに最低野郎です。
妄想とはいえ本家様に謝りたいレベル。ごめんなさい。
_______________
館林様がナチュラルに最低野郎です。
妄想とはいえ本家様に謝りたいレベル。ごめんなさい。
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なぜ。
どうして。
何度その言葉を飲み込んだだろうか。
なぜ。
-いずれ館林は見合い相手と結婚し、この邸に住むから。
どうして。
-もはや千家が館林邸に居座る理由がない。
理解できるのに、動揺は収まらない。
少ない手荷物を持って、千家は自宅へと帰っていった。
止める理由が見つからなくて、館林は作り笑いで千家を見送った。
これでよかったのだ。これで…
見えなくなった千家の背を追ったまま、館林は玄関に立ち尽くした。
ただでさえ世に認められぬ二人の仲、今後一生続けることなど不可能だ。引き返せるうちに二人は離れた方がよかった。
館林は何度も何度も自らに言って聞かせた。
胸に燻る想いは奥へと追いやり、ぎゅっと蓋を閉めた。
「坊ちゃま。夕飯の用意ができております」
いつもと全く変わらぬ爺やの声が背後から掛かる。
それはいっそ無機質然として、館林の心にさらに重しを落とした。
*
千家は、不思議な気持ちで自らの邸宅を見上げた。
「随分と久しぶりだ」
数ヶ月ぶりだったか。
住み慣れた千家邸であるというのに、まるで知らぬ家のようだ。
ギィと扉を開けると、ふわりと埃が舞い上がる。
足を踏み入れればやはり埃が舞う。
手で口を覆いながら、頭上の蜘蛛の巣を払う。
幸い、食物は置いていなかったので、その方面の虫の発生はなかったようだ。
「…部下を呼ぶか」
己の掃除能力を超えていると悟った千家は、素直にそう思った。
*
あれから数日。
館林の頭からは千家が離れることがない。
鍛錬に打ち込んで倒れ込んでそのまま眠っても、夢に見る。
起きてはやはり考える。
気になってしょうがない。
どうしたらいいんだ。
「…様…開様…?」
はっと顔を上げた。
目の前には器量の良い見合い相手。
心配そうな顔でこちらを見つめている。
「どこか具合が悪いんですか?」
館林の上の空を体調のせいだと思ったようだ。
本当に優しい娘である。
「…いえ、申し訳ない。昨日鍛錬に打ち込みすぎまして」
頭を掻きながら苦笑する。
全くの嘘ではない。
「まぁ。本当にご熱心ですのね」
控えめに二人で笑い合った。
姉が大層に勝気であるので、このような女性が嫁に来てくれれば相性が良いかも知れない。
などと心で思いながら。
館林は久しぶりに平穏とか安寧とかいうものを感じた。
*
千家が館林邸を出てから数週間が経った。
家が離れていると、やはり二人は会うことがほぼない。
軍部でたまにすれ違うかすれ違わないか程度だった。
気にはなっていたものの、千家に「元気か」などと声をかけることは憚られた。
結局は自分だけが見合いを受けて上手く運び、千家は一人のまま過ごしているのだから。
だが今日は久しぶりの軍部会議。
千家も呼ばれるはずだ。
好機だ。話しかけよう、今日こそは。
なんと声を掛けようものか逡巡しているうち、会議室へ着いてしまった。
席につきながら周りを見渡す。
まだ千家は来ていない。
腰を下ろし、手元の資料に目を落とす。
『大陸進出ニ於ケル作戦事項』
術式作戦採択時より何度も議題に出ている内容だ。下手に手を打てば大損害に繋がるため、軍部は慎重に話を進めてきた。
着々と席が埋まっていく。
千家が来た頃はもう会議が始まる時間だった。
声を掛ける間もなく、議長の挨拶が始まった。
館林は歯ぎしりしたくなった。
-術式作戦に変わる有力な作戦は。
-予算は。
-実行部隊の選出は。
様々な議題が上がる。
その都度、白熱した男たちの怒号が飛び交う。
いつものことだ。
「実行部隊の選出は有志とするのが良いのでは」
「そうだ、より志の高い者が行くべきだ」
「部隊の数は」
実行部隊に関して、軍部の意見は一致していた。
館林もそう思う。
我が帝國軍の士気は並々ならぬが、やはり有志とすればさらに気合も入ろう。
まずは大部隊をまとめる将校を選出せねばならぬ。
おそらくこの会議の出席者から有志を募ることになるだろう。
だがこの出兵、うまくいけば名声は上がるだろうが、失敗する可能性の方が高いといえる。ここに集まった者達から、『有志』で決まるかどうか。少なくとも将官達は嫌がるはずだ。
館林と同じことを考えているのだろう。
他の出席者たちも隙なく周りを観察している。
と、すっと手を挙げる者がいた。
「私に、大陸での陣頭指揮を任されたい」
館林は口を開けたまま、立ち上がった千家を見つめた。
他の者も同様に呆然と千家を見上げた。
まさか将官が自ら名乗り出るとは思わなかったのだ。
千家が大部隊を率いて、大陸へ向かう。
3へ 5へ
どうして。
何度その言葉を飲み込んだだろうか。
なぜ。
-いずれ館林は見合い相手と結婚し、この邸に住むから。
どうして。
-もはや千家が館林邸に居座る理由がない。
理解できるのに、動揺は収まらない。
少ない手荷物を持って、千家は自宅へと帰っていった。
止める理由が見つからなくて、館林は作り笑いで千家を見送った。
これでよかったのだ。これで…
見えなくなった千家の背を追ったまま、館林は玄関に立ち尽くした。
ただでさえ世に認められぬ二人の仲、今後一生続けることなど不可能だ。引き返せるうちに二人は離れた方がよかった。
館林は何度も何度も自らに言って聞かせた。
胸に燻る想いは奥へと追いやり、ぎゅっと蓋を閉めた。
「坊ちゃま。夕飯の用意ができております」
いつもと全く変わらぬ爺やの声が背後から掛かる。
それはいっそ無機質然として、館林の心にさらに重しを落とした。
*
千家は、不思議な気持ちで自らの邸宅を見上げた。
「随分と久しぶりだ」
数ヶ月ぶりだったか。
住み慣れた千家邸であるというのに、まるで知らぬ家のようだ。
ギィと扉を開けると、ふわりと埃が舞い上がる。
足を踏み入れればやはり埃が舞う。
手で口を覆いながら、頭上の蜘蛛の巣を払う。
幸い、食物は置いていなかったので、その方面の虫の発生はなかったようだ。
「…部下を呼ぶか」
己の掃除能力を超えていると悟った千家は、素直にそう思った。
*
あれから数日。
館林の頭からは千家が離れることがない。
鍛錬に打ち込んで倒れ込んでそのまま眠っても、夢に見る。
起きてはやはり考える。
気になってしょうがない。
どうしたらいいんだ。
「…様…開様…?」
はっと顔を上げた。
目の前には器量の良い見合い相手。
心配そうな顔でこちらを見つめている。
「どこか具合が悪いんですか?」
館林の上の空を体調のせいだと思ったようだ。
本当に優しい娘である。
「…いえ、申し訳ない。昨日鍛錬に打ち込みすぎまして」
頭を掻きながら苦笑する。
全くの嘘ではない。
「まぁ。本当にご熱心ですのね」
控えめに二人で笑い合った。
姉が大層に勝気であるので、このような女性が嫁に来てくれれば相性が良いかも知れない。
などと心で思いながら。
館林は久しぶりに平穏とか安寧とかいうものを感じた。
*
千家が館林邸を出てから数週間が経った。
家が離れていると、やはり二人は会うことがほぼない。
軍部でたまにすれ違うかすれ違わないか程度だった。
気にはなっていたものの、千家に「元気か」などと声をかけることは憚られた。
結局は自分だけが見合いを受けて上手く運び、千家は一人のまま過ごしているのだから。
だが今日は久しぶりの軍部会議。
千家も呼ばれるはずだ。
好機だ。話しかけよう、今日こそは。
なんと声を掛けようものか逡巡しているうち、会議室へ着いてしまった。
席につきながら周りを見渡す。
まだ千家は来ていない。
腰を下ろし、手元の資料に目を落とす。
『大陸進出ニ於ケル作戦事項』
術式作戦採択時より何度も議題に出ている内容だ。下手に手を打てば大損害に繋がるため、軍部は慎重に話を進めてきた。
着々と席が埋まっていく。
千家が来た頃はもう会議が始まる時間だった。
声を掛ける間もなく、議長の挨拶が始まった。
館林は歯ぎしりしたくなった。
-術式作戦に変わる有力な作戦は。
-予算は。
-実行部隊の選出は。
様々な議題が上がる。
その都度、白熱した男たちの怒号が飛び交う。
いつものことだ。
「実行部隊の選出は有志とするのが良いのでは」
「そうだ、より志の高い者が行くべきだ」
「部隊の数は」
実行部隊に関して、軍部の意見は一致していた。
館林もそう思う。
我が帝國軍の士気は並々ならぬが、やはり有志とすればさらに気合も入ろう。
まずは大部隊をまとめる将校を選出せねばならぬ。
おそらくこの会議の出席者から有志を募ることになるだろう。
だがこの出兵、うまくいけば名声は上がるだろうが、失敗する可能性の方が高いといえる。ここに集まった者達から、『有志』で決まるかどうか。少なくとも将官達は嫌がるはずだ。
館林と同じことを考えているのだろう。
他の出席者たちも隙なく周りを観察している。
と、すっと手を挙げる者がいた。
「私に、大陸での陣頭指揮を任されたい」
館林は口を開けたまま、立ち上がった千家を見つめた。
他の者も同様に呆然と千家を見上げた。
まさか将官が自ら名乗り出るとは思わなかったのだ。
千家が大部隊を率いて、大陸へ向かう。
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